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萌え出づるところの感想ブログ

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できたアアアー…!!!!
ずっと作りたかった「これできっと小説が打ちやすくなるはず『ぬらたんご』」ができました…どうも作り方がよくわからず調べていた…できたアアアー。
アプリを入れれば、iphoneでも使えるはずなんだ…もうこれでぜんをちんと打たなくてすむんだ。

小説は若の鴆さん観察日記(健康編)です。
リクオ×鴆「緑の指が好きだ」

鴆の指はたまに色に染まっている。薬草を素手で扱うためらしい。
毒をその身に持っている鳥は反対に外からの毒には強い。なので普通の者なら触ると肌がかぶれる草も、毒を含んだ草も全く気にしない、素手で行く。
鴆がふらふらと薬草を求めて薬鴆堂を飛び出すのも、薬にすれば効能の強いそれらの草を手軽に扱えるからかもしれない。
そしてその指は、今日は緑に染まっている。

「なかなか落ちねえなあ」
当の本人は、盃を持っていないほうの手をひらひらさせて呟いた。
「爪もきれいに染まっちまった」
指は先のほうがうっすらと緑を帯び、爪に至ってはきれいに色がついている。
正直なところリクオは初めてそれを見た時、昼のクラスの女子が遊びで付けるもの(大抵それは淡い色であったり、きらきら光るラメが入っていたりする)を思い出した。
が、もちろん口には出さない。色気づいたかなどと面白がって言った日には、反動で自分が吐血するのもかまわずゲンコツが来るからだ。
旨い酒を飲んでよくなっている機嫌をわざわざ斜めにする必要もないだろう。
その代わりに感想を言う。
「綺麗に染まるもんなんだな。植物で」
根元から先までマニキュアの覆い隠すような色とは違う、爪の地が見えたままの緑色だ。
そうだなァ、と鴆が言う。
「昔は花で爪を染めてたこともあったくらいだからな。ホウセンカとかでも染まる」
だから鳳仙花は爪紅ともいうな。そういってまたひらひらさせている。
なんだ今日は異様に機嫌がいいな、とリクオは思う。普段の鴆はあまり自分の知識を語る方ではない。どちらかというと聞くほうだ。
いつもより酒の進みも早い気がする。何かいいことでもあっただろうか。
昼の記憶を探ったが、特に思い当たるものは無かった。てめーなにしやがった。
「成分が強いってことはいい薬が出来るってことだ」
くいっとまた盃を開けた。そのまま手酌しようとしたのを止めて、酌をしてやる。
「妙に機嫌がいいのはそのせいか?」聞いてみる。
普段なら先ほどの杯で酒はもうやめているところだ。
鴆は目をきょとん、と開いた。何を言われているのかわからないという顔。
「機嫌、いいか?俺」
「いいな」
「そうか」ぽりぽりと緑の爪で顔を掻く。どうも微妙な顔をしている。
「違うのかよ」
「や、違わねえけど、いい薬ができんのもそうだけどよ」
それだけじゃなくてよ、と続ける。
「今日は一日仕事しててよ、んで夜もお前が来て、酒も飲めてよ」
「おう」
「明日も調子がいいような気がすんだよな」
それはすばらしい。なかなか聴かない言葉だ。
「そりゃめでてえな。だからか」
いやそれだけでもなくてよ、と否定された。まだぽりぽりと緑の爪で顔を掻いている。
さらにはちらりと横目でこちらを見てきた。
なんだその微妙な顔は、昼か。まじで昼なんかしやがったか。てめーナニしやがった!
いらいらしてきた。このままだと畏れが出るかもしれん。
「…それだけでもなくてよ」なんだよ
「明日も調子がいいような気がすんだよ」おう
「んで今日、お前泊まってくだろ?だから、」
ちら、とまた横目でこちらを見る。鴆の顔は赤い。爪は緑に染まっている。

リクオは、それに甘えてナニカをすることにした。

これが夜の緑の指の話。



ぴとん、ぴとん、という音が聞こえる。
雨の音か、いや違う、だってこんなに光でまぶしい、このおとは。

ああそうだ、鴆くんちの水琴窟の音だ。
薬鴆堂と一緒になった家は、床につくことの多い鴆のために設計されている。そのひとつがこれだった。地中に穴を開けた瓶を上下反対にして埋め、空洞を作り出し、その上に砂利を敷く。上から水を流すと砂利を伝わって瓶から地中に雫が落ち、その時の雫が琴のような音を出す。だから水琴窟という。
たとえ寝ていたとしても、楽しめるもののひとつだ。
夜のほうはそのまま泊まったんだっけ、ほんとに好きにしてくれるよ。
しかも妙にすっきりしている。ああもう、ほんとに何したの!知ってるけど!!

音のするほうに目を開くと、庭に下り手水鉢から水を撒く鴆が見えた。
珍しいなと思う。いつもなら自分の方が先に起きる。
鴆は柄杓を片付けると、そのまま庭にしゃがみこんで何かをやっている。
リクオはもぞもぞと体を起こし、近づいた。
「鴆君おはよう」
「リクオ、起きたのか」振り向いて立ち上がろうとする鴆に、何をしてるの?と声をかけた。
「もう少しで花が咲くからよ、元気のねえ葉を取ってた」
手には少し黄色くなった葉を握っている。素手だ。鋏を使えばいいのにと思う。
葉から出た灰汁で指が少し染まっている。
どうやら鴆は植物を素手で触る癖があるらしい、とリクオは思った。
「鴆君、植物好きだよね、なんかよく触ってる気がする」
「まあ、薬の元だしな。野生じゃないと無理なのは取りに行くが、育てられるもんは育てるしな」
きらいだったらやってけねえよ、と返事が返ってきた。
そういうことじゃないんだけどな、と思う。
嫌いだったら、そんな風に触らないと思う。鴆の指は少し厚めの葉をなでるように触っている。
昨日も見た、緑に染まった指だ。
そういえば、植物を育てるのがうまい人のことを、英語で緑の指を持った人って言った気がする。授業で習った。リクオは思う。
好きだからきっと染まっちゃうんだよね、好きだから育てるのが上手いんだろうな。
そのままぼうっと葉を整えるのを眺めていると、ふ、と鴆が振り返った。
笑う。
「リクオ、お前髪の毛すっげえはねてるぞ」

そう言って、緑に染まった指でこっちもきれいに整えられた。

これが昼の緑の指の話。


緑の指が、好きだ。

END

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